査読者を推薦する欄(suggested reviewers)はどう書くか
投稿システムを進めていくと、査読者の候補を挙げてくださいという画面が出てくる。必須のこともあれば任意のこともある。初めてだと誰を書けばいいのか分からず、そこで手が止まる。判断の材料を整理しておく。
何のための欄か
編集者は、投稿された原稿の内容を正しく評価できる査読者を探す必要がある。ただし編集者がすべての細分野に詳しいわけではないので、著者に候補を出してもらうことで探索を助ける、という趣旨になる。
ここで理解しておきたいのは、推薦がそのまま採用されるとは限らないことになる。編集者は独自にも候補を探し、推薦者を使うかどうかは編集者が決める。実際に推薦から選ばれる割合は分野やジャーナルによってかなり幅がある。
つまりこの欄は、自分に有利な査読者を確保する仕組みではなく、適切な評価者に届く確率を上げるための情報提供だと考えたほうがいい。
誰を挙げられるか
基本は、その原稿を専門的に評価できる立場にある研究者になる。
・自分の論文が引用している文献の著者。同じ問題に取り組んでいる証拠になる
・その分野の主要な会議やジャーナルで、近い時期に発表している人
・手法や対象は違うが、評価の観点を共有している人
多くのジャーナルは、所属機関が偏らないことや、同一機関から複数挙げないことを求める。国や地域の分散を求める場合もある。
書く情報は氏名、所属、メールアドレス、そして推薦理由になる。理由の欄は空欄でも通ることがあるが、一行でも書いたほうがいい。「本原稿が用いた手法の原著者であり、前提の妥当性を評価できる」程度で十分になる。
メールアドレスは所属機関の公式なものを使う。フリーメールだと、なりすましを疑われて無視されることがある。実際に推薦者を装った査読偽装の事件が過去にあったため、この点は厳しく見られる。
挙げてはいけない人
利益相反にあたる関係の人は外す必要がある。おおむね次のような基準になる。
・現在または最近の共著者。ジャーナルによって過去3年、5年などの期間が指定される
・同じ所属機関の人
・指導教員や指導した学生
・共同研究の資金を共有している人
・親族や近しい個人的関係にある人
期間や範囲はジャーナルの投稿規定に書いてあるので、そこを見るのが確実になる。うっかり共著者を挙げると、規定違反として扱われることがある。
自分で気づかないケースもある。数年前の大型プロジェクトで名前が並んでいた、共著の総説がある、といった関係は忘れやすい。不安なら自分の業績リストで名前を検索して確認したほうがいい。
除外を希望する欄
推薦とは別に、査読を避けてほしい相手を書く欄が用意されていることがある(opposed reviewers、non-preferred reviewers など)。
これは使ってよい仕組みだが、書き方に配慮が要る。
・理由を書く。「競合関係にあり、未発表の内容が重なっている」といった具体的な事情なら通りやすい
・人数を絞る。多数を除外すると、そもそも評価できる人がいなくなる
・個人的な感情を書かない。過去に厳しい査読をされた、という理由は通らない
除外希望は、正当な懸念がある場合の安全弁として使うものになる。実際、直接競合している研究室に未発表の詳細を見せたくない、という状況は現実にある。
推薦しない選択
任意の欄であれば、空欄で出すこともできる。分野が狭くて適切な人が全員共著者だった、という場合もある。その場合は無理に埋めず、必要ならカバーレターで事情を説明する。
逆に必須の場合は、条件を満たす人を探す作業が発生する。引用文献の著者一覧を眺めて、共著関係のない人を拾っていくのが手っ取り早い。
実務上のコツ
・投稿直前ではなく、原稿を書いている段階で候補をメモしておく。引用しながら気づくことが多い
・所属とメールは公式サイトで確認する。異動していることがある
・推薦者の研究と自分の原稿の接点を、一行で言えるようにしておく
・同じジャーナルに続けて投稿する場合、毎回同じ顔ぶれにならないようにする
投稿手続き全般で詰まった点はIEEE Accessへの投稿で躓いた点に、費用と期間の見通しはAPCと査読期間に書いた。査読コメントが返ってきたあとの対応は査読コメントへの返信の書き方にまとめてある。
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まとめ
・推薦欄は編集者の探索を助けるためのもので、そのまま採用されるとは限らない
・引用文献の著者や、同じ問題に取り組む研究者が基本の候補になる
・共著者、同一機関、指導関係、資金の共有は利益相反として外す。期間は投稿規定を確認する
・メールは所属機関の公式なものを使う。査読偽装の経緯から厳しく見られる
・除外希望は具体的な理由を添えて少数に絞る。感情的な理由は通らない
・候補は投稿直前ではなく執筆中にメモしておくと楽になる
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