IEEE Accessの掲載料(APC)と査読期間。投稿前に知っておきたいお金と時間の話
IEEE Accessは投稿から採録までが速いことで知られていて、締切に追われている身にはありがたい選択肢になる。ただしオープンアクセス誌なので、通れば著者側が掲載料を払うことになる。金額と期間の見通しを立てないまま投稿すると、採録通知が来てから研究費の残高を見て青くなることになる。投稿を決める前に確認しておきたい点をまとめる。
投稿作業そのもので詰まった点はIEEE Accessへの投稿で躓いた点に書いたので、あわせてどうぞ。
掲載料は2000ドル前後
IEEE AccessのAPC(Article Processing Charge、論文処理費用)は、2000ドル前後が相場になっている。為替次第だが、日本円にすると30万円前後を見込んでおくことになる。
重要なのは、この金額が改定されることだ。数年おきに値上げされてきた経緯があるので、投稿を検討する時点で必ず公式ページの最新の金額を確認してほしい。ここに書いた数字は目安であって、支払い時点の請求額とは違う可能性がある。
予算面で押さえておくべき点をいくつか挙げる。
・支払うのは採録が決まったあと。投稿時や査読中には発生しない ・科研費など公的研究費から支出できるのが一般的だが、費目の扱いは所属機関の経理ルールによる。年度末をまたぐ場合は特に早めに事務へ確認しておく ・IEEE会員だからといってAPCが無料になるわけではない。会員向けの割引が設定されることはあるので、条件は都度確認する ・所属機関が出版社と包括契約(transformative agreementなど)を結んでいると、著者負担がゼロまたは軽減されることがある。大学図書館のページに一覧があることが多いので、投稿前に一度見ておく価値は大きい
この最後の包括契約は見落とされがちだが、該当すれば30万円が消える話なので、確認する時間の費用対効果はとても高い。
査読プロセスが独特である
IEEE Accessの査読は、一般的なジャーナルとは少し違う設計になっている。
通常のジャーナルだと、Major Revision、Minor Revisionと何度か往復しながら論文を仕上げていくことが多い。IEEE Accessはこの往復を短くする方針で、判定がAccept、Revise、Rejectに整理されていて、改訂の機会は原則として一度と考えておくのが安全だ。
これは速さと引き換えのトレードオフになっている。
・良い面。決着が早い。だらだらと半年一年かかることがない ・厳しい面。一度の改訂で査読者を納得させられなければリジェクトになる。「次の改訂で直します」が通用しにくい
したがって初回投稿の完成度がそのまま結果に直結する。査読者の指摘が想定できる箇所は、投稿前に自分で潰しておいたほうがいい。改訂時の返信の書き方は査読コメントへの返信の書き方にまとめてある。
期間の見通し
IEEE Accessは初回判定までの目安を短く設定しており、うまくいけば投稿から1か月前後で最初の結果が返ってくる。ただしこれはあくまで目安で、査読者が見つからない分野や、時期によっては伸びる。
現実的なスケジュール感としては、こう見ておくとずれが少ない。
・投稿から初回判定まで。数週間から2か月程度 ・改訂の作業期間。指定される期限は短めなので、改訂の時間をあらかじめ空けておく ・採録から公開まで。オープンアクセスなので公開自体は速い
学位審査や年度の業績報告に間に合わせたい場合、逆算して2、3か月の余裕を持って投稿するのが現実的だと思う。速いといっても、ぎりぎりで投稿して間に合う保証はない。
リジェクトされた場合
リジェクトの場合はAPCは発生しない。金銭的な損失はなく、失うのは時間だけになる。
ただしIEEE Accessは同じ原稿の再投稿に制限を設けている場合があるので、リジェクト通知に書かれている条件は必ず読むこと。別のIEEE系ジャーナルへ回すのか、内容を大きく変えて再挑戦するのかは、その条件を見てから決めることになる。
投稿形式で詰まらないために
IEEE系は投稿時のPDF検査(IEEE PDF eXpress)やテンプレートの縛りで時間を取られやすい。このあたりは別記事にまとめてあるので、投稿直前に見ておくと事故が減る。
・IEEE PDF eXpressでエラーが出るときの対処 ・IEEEtranのLaTeXで気をつけること
まとめ
・IEEE AccessのAPCは2000ドル前後が目安。改定されるので必ず公式で最新額を確認する ・支払いは採録後。所属機関の包括契約に該当すると負担が消えることがあるので投稿前に確認する価値が高い ・査読はAccept、Revise、Rejectの構成で、改訂の機会は原則一度と考えて初回の完成度を上げる ・初回判定まで数週間から2か月程度。締切から逆算するなら2、3か月の余裕を見ておく ・リジェクトならAPCはかからない。ただし再投稿の条件は通知をよく読むこと ・金額も期間も変更されうるので、最終的な判断はIEEEの公式情報で行うこと