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台風はなぜ日本に曲がってくるのか。海面水温・太平洋高気圧・偏西風を自分で動かせる「台風育成シミュレーター」を作った

初代の台風進路シミュレーターがよく遊ばれているので、第二弾を作った。今度は進路を眺めるだけではなく、台風を取り巻く環境そのものを自分の手で設定して、台風を発生から消滅まで「育てる」シミュレーターだ。

台風育成シミュレーター(TYPHOON LAB)を開く

いじれるのは3つ。海面水温、太平洋高気圧の強さ、偏西風の位置。この3つが台風の一生をほぼ決めるというのが、このアプリでいちばん伝えたいことでもある。

台風が発達する条件は何か

台風のエネルギー源は暖かい海から立ちのぼる水蒸気で、目安としてよく使われるのが海面水温26.5℃というラインだ。これより暖かい海の上では発達し、冷たい海に出ると急速に衰える。フィリピン沖の海面水温が30℃近くある夏に台風が次々発生するのはこのためで、逆に日本近海まで北上すると海水が冷たくなって弱まっていく。

シミュレーターでは地図上に「SST 26.5℃」の点線を引いてある。海面水温の設定を上げるとこの線が北へ動き、台風が衰えずに日本へ到達しやすくなるのが見てとれるはずだ。

台風はなぜ日本に曲がってくるのか

台風は自力ではほとんど進めない。まわりの風に流されて動く。夏の太平洋には太平洋高気圧という巨大な高気圧が居座っていて、そのまわりを時計回りの風が吹いている。台風はこの高気圧の南側のへりに沿って西へ流され、高気圧の張り出しの西端まで来ると、こんどは北向きの流れに乗って北上を始める。

そして北緯30度あたりで偏西風という強い西風の帯に入ると、進路が北東へ変わって一気に加速する。これが「転向」で、日本に来る台風の多くが九州や四国のあたりで急に速くなって北東へ抜けていくのは、偏西風に乗ったからだ。

つまり台風の進路は「太平洋高気圧のふちに沿って回り込み、偏西風で跳ね返される」という2段構えで決まっている。日本列島は、ちょうどその折り返し地点に横たわっている。

高気圧の強さで行き先が変わる

シミュレーターで太平洋高気圧の強さを変えると、これが実感できる。

・高気圧が強い年は、張り出しが西へ大きく伸びる。台風は転向できずに西進を続け、沖縄から九州、さらに台湾や中国大陸へ向かうコースが増える ・高気圧がふつうの年は、張り出しの西端がだいたい日本の上にあり、九州・四国への上陸コースが最も出やすい ・高気圧が弱い年は、台風が早めに転向して日本の東の海上を北東へ抜けていく。上陸せずに終わる台風が増える

実際の夏の天気図でも「太平洋高気圧の張り出しがどこまで伸びているか」は台風進路予想の最重要ポイントで、気象情報でよく聞く「高気圧のふちを回って」という表現はこの仕組みを指している。

温暖化で台風は強くなるのか

シミュレーターの海面水温を「+3℃(温暖化)」にすると、体感としてわかりやすい変化が2つ起きる。発達の上限が上がって中心気圧900hPa前後の猛烈な台風が育ちやすくなること、そして26.5℃ラインが北上するぶん、日本の目前まで衰えずに到達する台風が増えることだ。

現実の観測でも西太平洋の海面水温は長期的に上昇していて、「台風の総数はさほど増えないが、強い台風の割合が増える」というのが多くの研究の示す傾向とされる。シミュレーターの挙動は極端に単純化したものだが、海面水温が台風の強さの天井を決めるという骨格は同じだ。

遊び方と記録について

環境を3つ設定して「台風を発生させる」を押すと、南の海上で熱帯低気圧が生まれ、リアルタイムで発達しながら動き出す。転向、上陸、温帯低気圧化までの一生をログつきで観察でき、終わると成績が出る。

・評価は最低中心気圧のランク制。955hPaでB、935でA、915でS、895を切ると歴代級のSSランク ・上陸した地方、最大風速、台風の寿命も記録される ・「記録をコピーして自慢する」ボタンで結果テキストをそのまま共有できる

ちなみに現実の統計では、日本に上陸した台風の上陸時中心気圧の記録は900hPa台前半が最強クラスとされる。シミュレーターでSSランクを出せたら、それは歴史に残る台風を育てたということになる。

実装の話

例によって外部ライブラリなしの単一HTMLで、地図も台風もCanvasに直接描いている。

・海岸線は九州・四国・本州・北海道・台湾・朝鮮半島・ルソン島をそれぞれ十数点の多角形に単純化した。上陸判定はpoint-in-polygonの自前実装 ・操舵流は「高気圧まわりの時計回りの流れ+偏西風+β効果(台風が自転の効果でゆっくり北西に流されるくせ)」の3つのベクトル和 ・発達は海面水温と26.5℃の差に比例して中心気圧を下げ、陸上・冷たい海・強い風のシア(上空と地上の風のずれ)で埋め戻す ・中心気圧から最大風速への換算は経験式を使い、気象庁の階級(台風→強い→非常に強い→猛烈な)で表示を切り替える

モデルの粒度はゲームとして楽しい範囲に割り切ってあり、実際の予報とはまったく別物だ。本物の台風情報は気象庁のサイトで確認してほしい。

まとめ

・台風を「育てる」シミュレーター第二弾を作った。海面水温・太平洋高気圧・偏西風の3つを設定して最低中心気圧の記録に挑む ・台風は海面水温26.5℃以上の海で発達し、太平洋高気圧のふちに沿って流され、偏西風で北東へ転向する。この骨格をそのまま操作できるようにした ・高気圧が強いと西進して九州・大陸コース、弱いと海上で転向して上陸なし、という実際の傾向が再現される ・温暖化設定にすると猛烈な台風が育ちやすくなる。海面水温が台風の強さの天井を決めるため ・台風育成シミュレーターから。初代の進路シミュレーターとあわせてどうぞ