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台風の予報円はなぜあんなに大きいのか。進路予想が外れる理由を仕組みから説明する

台風情報を見ていると、日が進むほど予報円が大きくなっていく。5日先になると円が日本列島をまるごと覆うくらいになることもあって、これでは予報になっていないのではと思ってしまう。あの円が何を意味しているのかを整理しておく。

予報円は「中心が入る範囲」であって危険範囲ではない

まず最大の誤解から。予報円は、その時刻に台風の中心が入る確率が70%の範囲を示している。円の内側が全部暴風になるという意味ではないし、逆に円の外なら安全という意味でもない。

・予報円。台風の中心が70%の確率で入る範囲。あくまで中心の位置の不確かさを表す ・暴風警戒域。台風が予報円の中を進んだ場合に、暴風域に入るおそれがある範囲。実際に警戒すべきなのはこちら

自分の住む場所が予報円の縁にかかっているとき、「中心は来ないから大丈夫」と考えるのは危険だ。台風の風は中心から数百キロ離れた場所でも吹くので、見るべきなのは予報円より外側に描かれる暴風警戒域のほうになる。

そして70%という数字は、裏を返せば30%は円の外に行くということでもある。5回に1回以上は円から外れる。予報円は保証ではなく確率の表現だと考えておく。

なぜ先の予報ほど円が大きくなるのか

台風の進路予想が難しいのは、台風が自分の力で進んでいるのではなく、周囲の風に流されて動いているからだ。つまり台風の進路を当てるには、台風そのものではなく、台風を取り巻く大気の流れを当てる必要がある。

日本付近で効いてくるのは主に2つある。

・太平洋高気圧。夏の太平洋に居座る巨大な高気圧で、台風はそのふちに沿って流される。この高気圧が西にどこまで張り出すかで、台風が西へ進み続けるか、日本へ向かって北上するかが決まる ・偏西風。北緯30度あたりから上空を吹く強い西風で、台風がこの帯に入ると進路が北東に変わって加速する。これが転向と呼ばれる現象になる

問題は、この2つ自体が数日先には不確かだということだ。高気圧の張り出しがあと100km西へ伸びるかどうかで、台風が九州に上陸するか、東シナ海を西進して大陸へ向かうかが変わってしまう。予報の対象が「台風の位置」ではなく「高気圧の形」になっている以上、日が進むほど誤差が積み重なる。

さらに厄介なのは、大気がカオス的な性質を持っていることだ。初期状態のごくわずかな違いが、時間が経つと大きな差に育つ。海上は陸上に比べて観測点が圧倒的に少ないため、そもそも計算の出発点にあたる初期値に誤差が入りやすい。予報円が5日先で大きく膨らむのは、この積み重なった不確かさを正直に表示した結果でしかない。

台風同士が干渉することもある

台風が2つ同時に存在するとき、互いの流れが干渉して進路が複雑になることがある。藤原の効果と呼ばれる現象で、2つの台風が反時計回りに回り込むように動いたり、片方がもう片方に引き寄せられたりする。

こうなると予報の難易度は跳ね上がる。予報円がいつもより大きい台風があったら、周囲にもう一つ台風や熱帯低気圧がいないか見てみると、理由が見えることがある。

実際にいじってみるとわかる

高気圧の張り出しで進路が変わるという話は、文章で読むよりも自分で動かしたほうが早い。太平洋高気圧の強さと偏西風の位置を設定して台風を発生させられるシミュレーターを作ってあるので、同じ場所で発生させても行き先が変わることを試してみてほしい。

台風育成シミュレーター。高気圧を強くすると西進して大陸方面、弱くすると海上で転向して上陸しないコースが増える ・台風進路シミュレーター。進路をなぞって追える初代のほう

高気圧の設定を一段変えるだけで上陸地点が九州から関東まで動くのを見ると、予報円が大きくならざるを得ない理由が体感できると思う。

予報円との付き合い方

実用的には、次の3つを押さえておけば十分だと思う。

・円の大きさは不確かさの大きさ。円が大きい日は、進路がまだ決まっていないという意味なので、こまめに更新を見る ・見るべきは予報円ではなく暴風警戒域。中心が来なくても暴風は来る ・直前になるほど円は小さくなる。24時間以内の予報はかなり信頼できるので、最終判断はそこで下す

予報円が大きいことは予報の失敗ではなく、わからない部分をわからないと表示している誠実さの現れだと考えるほうが、たぶん実態に近い。

まとめ

・予報円は台風の中心が70%の確率で入る範囲。円の中が全部危険という意味ではない ・警戒すべきは予報円ではなく暴風警戒域のほう。中心が来なくても暴風は届く ・台風は周囲の風に流されて動くので、進路予想は太平洋高気圧と偏西風の予想とほぼ同じ問題になる ・海上は観測が少なく初期値に誤差が入りやすいうえ、大気はカオス的なので、先の予報ほど円が膨らむ ・台風が2つあると藤原の効果で進路がさらに読みにくくなる ・最新の台風情報は必ず気象庁の発表で確認すること