論文の著者順はどう決めるのか。筆頭著者と責任著者の意味を整理する
論文を書き終えたあとに揉める話題の代表が、著者の順番になる。しかも成果が出たあとに議論すると、必ず角が立つ。順番が何を意味しているのかを整理しておくと、先に決めておく話がしやすくなる。
3つの位置に意味がある
多くの分野で、著者リストの位置には共通の含意がある。
・筆頭著者(first author)。実験や解析を主導し、原稿を書いた人。業績としていちばん強く評価される
・責任著者(corresponding author)。投稿の手続きを担当し、査読者や編集部とやり取りし、公開後の問い合わせに答える人。論文に連絡先が載る
・ラストオーサー。研究室を主宰し、研究の方向づけと資金を担った人。分野によっては筆頭に次いで重い
中間の著者は、貢献の大きい順に並べるのが一般的になる。ただしここは慣習で、厳密な規則があるわけではない。
責任著者とラストオーサーは同じ人であることが多いが、別でも構わない。学生が責任著者になることもあるし、指導教員が責任著者で位置は中間ということもある。
分野によって重みが違う
ここが混乱のもとになる。
・生命科学系。筆頭とラストが重く、中間は薄い。ラストオーサーが研究の主宰者という読み方が定着している
・数学や理論物理の一部。貢献の大小に関わらずアルファベット順に並べる慣習がある。順番から貢献を読み取れない
・情報系。筆頭が最も重く、以降は貢献順。ラストが指導教員という運用が多い
だから他分野の人の業績リストを見て、順番だけで貢献を判断するのは危うい。アルファベット順の分野で3番目だからといって、貢献が小さいとは限らない。
共同筆頭著者という選択肢
貢献が拮抗している場合、複数人を共同筆頭著者にする運用がある。名前の右肩に記号を付け、脚注で「これらの著者は本研究に等しく貢献した」と記す形になる。
実務上の注意点がある。
・書類上は一人目が先頭として扱われることが多い。業績データベースや検索結果では並び順が残る
・審査の場でどう評価されるかは制度による。共同筆頭を筆頭として扱う制度もあれば、そうでない場合もある
・「等しく貢献した」と書く以上、両者が説明責任を負う
形式的に増やすと、かえって一人あたりの評価が薄まることもある。実態が伴う場合に使うものだと考えたほうがいい。
誰を著者に入れるか
順番の前に、そもそも著者に入れる基準がある。国際的には、次の要素をすべて満たすことを求める考え方が広く参照されている。
・研究の構想や設計、あるいはデータの取得・解析・解釈に実質的に貢献した
・原稿の執筆または重要な内容の批判的な改訂に関わった
・投稿する版を承認した
・研究全体の正確性と誠実性について説明責任を負うことに同意した
裏を返すと、資金を取ってきただけ、データを提供しただけ、原稿を見ただけ、という関与は著者ではなく謝辞にあたる、という整理になる。
避けるべき慣行として名前が付いているものもある。
・ギフトオーサーシップ。貢献のない人を立場や礼儀で加える
・ゴーストオーサーシップ。実質的に書いた人を著者に入れない
どちらも研究公正の問題として扱われる。
貢献を明記する仕組み
最近は多くのジャーナルが、著者ごとの役割を明記する欄を設けている。CRediT(Contributor Roles Taxonomy)という分類がよく使われていて、概念化、方法論、ソフトウェア、検証、形式解析、調査、資源、データ管理、執筆(初稿)、執筆(校閲・編集)、可視化、監督、プロジェクト管理、資金獲得、といった役割に分けて記載する。
これがあると、順番だけでは表せない貢献を書き残せる。中間著者でもソフトウェアと可視化を担当した、と明示できるので、書けるなら書いておいたほうが後で効く。
着手前に決めておく
結局のところ、いちばん効くのは順番を先に話しておくことになる。研究が始まる時点で、次を共有しておくと後の摩擦が減る。
・現時点で想定している著者順と、その根拠
・貢献が変わったら順番も見直すという合意
・責任著者を誰にするか
・成果が複数の論文に分かれた場合、どう配分するか
「結果が出てから考えよう」がいちばん揉める。まだ何も出ていない段階のほうが、利害がないぶん冷静に決められる。
投稿作業そのもので詰まりやすい点はIEEE Accessへの投稿で躓いた点に、費用と期間の見通しはAPCと査読期間に書いた。
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まとめ
・筆頭は主導した人、責任著者は連絡と手続きを担う人、ラストは主宰者というのが基本の読み方
・順番の慣習は分野で異なる。アルファベット順の分野では順番から貢献を読めない
・共同筆頭は実態が伴うときの選択肢。形式的に増やすと評価が薄まることもある
・著者の要件は貢献と執筆と承認と説明責任。それ以外の関与は謝辞にあたる
・CRediTのような役割記載があるなら使う。順番で表せない貢献を残せる
・順番は研究の着手前に話しておく。結果が出てからでは必ず角が立つ
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