北千住は「買い」なのか?8年で2.15倍、いちばん速い街を分解する(2026年8月)
北千住は足立区の駅で、JR常磐線・東武伊勢崎線・東京メトロ2線・つくばエクスプレスが集まる。乗り入れ路線の数でいえば、この特集で扱ってきた駅の中で最も多い。
そして地価の上がり方も、いちばん速かった。
まず数字でざっくり掴む
| 指標 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 公示地価 最高地点 2025 | 505.0万円/㎡ | 千住2丁目57番3外(駅190m) |
| 前年比 2025 | +23.2% | 収録9駅で最高 |
| 8年間の伸び 2018→2025 | 2.15倍 | 赤羽1.79倍、南浦和1.21倍 |
| 住宅地の伸び | 1.43倍 | 千住旭町66番 |
| 乗降客数 2023年度 | 387,496人/日 | JR東日本・常磐線 |
| 所在 | 東京都足立区 | 東京駅まで約20分 |
+23.2%という数字は、赤羽の+18.1%を上回る。8年の伸び2.15倍も、赤羽の1.79倍より速い。
コロナの年もマイナスにならなかった
前年比を年ごとに並べる。
2021年が+1.9%になる。伸びは鈍ったが、マイナスに落ちていない。
赤羽は同じ年に-3.2%、南浦和は-1.3%だった。この特集で見てきた駅のうち、コロナの年にプラスを保ったのは北千住だけになる。
そこから+4.0%、+8.0%、+12.6%、+23.2%と、年を追うごとに加速している。減速の気配がない。
上がり方は駅前に集中している
地点ごとの推移を並べる。
いちばん上の線が駅前商業地で、235万円から505万円へ2.15倍。次が千住3丁目の1.89倍、千住旭町45番の1.86倍と続く。
住宅地はいちばん下の線で、43.8万円から62.8万円の1.43倍になる。駅前の2.15倍とは0.7倍ぶんの差がついた。
これは赤羽と同じ形になる。駅前が突出して上がり、住宅地はゆるやかについていく。南浦和のように住宅地が先行する形とは正反対になる。
人の戻りはいちばん鈍いのに、地価はいちばん速い
乗降客数を重ねると、不思議な絵になる。
2019年度のピーク441,806人から、2020年度は322,542人まで落ちた。27%の減少で、赤羽の24%、南浦和の26%より深い。2023年度は387,496人で、ピークの88%までしか戻っていない。赤羽94%、南浦和89%と比べて、いちばん鈍い。
人の戻りが最も鈍い駅で、地価が最も速く上がっている。3駅を並べると関係が逆になっている。
| 駅 | 乗降客の回復率 | 2025年の前年比 | 8年の伸び |
|---|---|---|---|
| 北千住 | 88% | +23.2% | 2.15倍 |
| 南浦和 | 89% | +4.7% | 1.21倍 |
| 赤羽 | 94% | +18.1% | 1.79倍 |
地価は、いま人がどれだけ通っているかではなく、この先どうなるかの評価で決まる。北千住の場合、大学の集積や再開発への期待が先行しているとみられる。ただし期待が先行しているということは、裏づけが来なければ調整もあるということになる。
同じ千住二丁目に5.6倍の差がある
2025年の地点別で並べる。
この街のいちばん面白い数字がここにある。
千住2丁目57番3外が505万円/㎡で、駅から190メートル。千住2丁目39番15が90万円/㎡で、駅から180メートル。同じ町名で、しかも安いほうが駅に近い。それで5.6倍の差がつく。
| 地点 | 用途 | 駅から | 容積率 | 前面道路 | 2025年 | 8年の伸び |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 千住2丁目57番3外 | 商業地 | 190m | 600% | 18.0m | 505.0万円/㎡ | 2.15倍 |
| 千住3丁目70番2 | 商業地 | 230m | 400% | 7.3m | 233.0万円/㎡ | 1.89倍 |
| 千住旭町45番2外 | 商業地 | 210m | 400% | 7.2m | 212.0万円/㎡ | 1.86倍 |
| 千住2丁目39番15 | 商業地 | 180m | 400% | 8.0m | 90.0万円/㎡ | 1.53倍 |
| 千住旭町66番17 | 住宅地 | 400m | 300% | 3.5m | 62.8万円/㎡ | 1.43倍 |
効いているのは容積率と前面道路になる。600%と400%、18メートルと8メートル。敷地の何倍の床を建てられるかという上限と、実際にそれを建てられるだけの道路があるかどうか。この2つが、駅からの距離を打ち消している。
伸びを見ても同じことが言える。容積率600%の地点が2.15倍で、400%の3地点は1.53倍から1.89倍にとどまる。上がるときも、床を積める土地から先に上がっている。
この街のリスク
ひとつ目は、加速そのものになる。+8.0%、+12.6%、+23.2%と3年続けて上げ幅が拡大している。この形は、どこかで止まると反動が出やすい。
ふたつ目は、乗降客がピークの88%で止まっていることになる。地価の根拠が期待にあるなら、期待が外れたときの下げ幅は大きくなる。
みっつ目は、街の中の格差になる。5.6倍の差は、駅前の一部だけが評価されていることを意味する。街全体が持ち上がっているのではないので、買う場所を間違えると恩恵を受けられない。
総合所見:勢いは本物、ただし買う場所で結果が変わる
北千住の地価は、この特集で扱った9駅の中で最も速く上がっている。8年で2.15倍、コロナの年もプラス、直近は+23.2%。数字の並びに弱点がない。
ただし、その上昇は容積率600%の駅前商業地に集中している。同じ千住二丁目でも、容積率400%の地点は1.53倍にとどまった。住宅地は1.43倍で、赤羽の住宅地1.35倍と大差ない。
投資として見るなら、容積率と前面道路を確認せずに「北千住だから」と買うのは危ない。住むために買うなら、上昇率の高さは住居費の上昇として跳ね返る側面もある。同じ街の中で、答えが分かれる種類の駅になる。
データについて
出典は国土交通省「不動産情報ライブラリ」の地価公示・地価調査のポイント、および国土数値情報の駅別乗降客数になる。地価は北千住駅の中心から半径425メートル以内の地点を使っている。
乗降客数はJR東日本・常磐線の数値になる。北千住は5社局が乗り入れており、事業者によっては他社ぶんを含む集計になっているため、単純合計はしていない。系列として連続している常磐線の数値を採用した。実際の駅全体の利用者数はこれより大きくなる。
公示地価は実際の売買価格ではなく、国が選んだ標準地について不動産鑑定士が評価した価格になる。
地価データで街を読む特集はこちらにまとめています。8駅をまとめて比べたい場合は土地の値段はなぜ違うから。