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駅から同じ距離なのに地価が5倍違う。国交省のデータで8駅を分解した

土地の値段は駅からの距離で決まる、と思っていた。実際にデータを取って並べてみたら、それだけでは説明がつかない場所がいくつも出てきた。

国土交通省の不動産情報ライブラリからAPIで地価公示のデータを取り、埼玉南部から東京北部の8駅について、駅の中心から半径425メートル以内の調査地点を集めた。大宮、浦和、蕨、川口、赤羽、王子、池袋、北千住になる。

土地の値段はなぜ違う(8駅の地価を分解するツール)

北千住で見つけた5.6倍

いちばんはっきり出たのが北千住だった。同じ千住二丁目の中で、こうなっている。

・千住2丁目57番 駅から190m 505万円/㎡
・千住2丁目39番 駅から180m 90万円/㎡

駅からの距離は10メートルしか違わない。むしろ安いほうが駅に近い。それで単価は5.6倍になる。

違いは二つあった。容積率が600%と400%、前面道路が18メートルと8メートルになる。容積率は敷地の何倍の床を建てられるかという上限で、600%なら100平米の土地に600平米の床を積める。同じ広さの土地から生まれる家賃収入が1.5倍変わるので、土地の値段もそのぶん変わる。

前面道路の幅も効く。道路が狭いと、容積率の上限まで建てられないことがある。建築基準法に道路幅から容積率を制限する規定があるためで、紙の上の600%が実際には使えない土地というのが存在する。

距離で説明できる駅と、できない駅

駅ごとに、駅からの距離と単価の相関係数を計算してみた。マイナス1に近いほど「駅に近いほど高い」がきれいに成り立つ。

・蕨 -0.96
・王子 -0.95
・川口 -0.94
・大宮 -0.90
・赤羽 -0.86
・北千住 -0.49
・浦和 -0.33
・池袋 -0.28

きれいに分かれた。上の5駅では距離がほぼすべてを説明している。下の3駅では説明できていない。

この違いは調査地点の数と対応していた。蕨は3地点、王子は3地点しかない。池袋は10地点、浦和は11地点ある。地点が少ない駅では、駅前の商業地と離れた住宅地という2種類しかサンプルがないので、距離と値段がきれいに並んでしまう。街が大きくなって地点が増えると、同じ距離帯の中にいろいろな条件の土地が入ってきて、距離では説明がつかなくなる。

つまり「駅からの距離で決まる」という理解は、街が小さいうちは正しく、街が大きくなるほど外れていく。自分が調べたい場所がどちらなのかを先に見たほうがいい。

都県境をまたぐと上がり方が変わる

前年比の平均を県ごとに出すと、埼玉4駅が+6.8%、東京4駅が+14.4%になった。倍以上違う。

駅ごとに見るとこうなる。

・北千住 +15.9%
・王子 +15.4%
・赤羽 +13.8%
・池袋 +12.4%
・大宮 +8.8%
・浦和 +7.3%
・蕨 +5.8%
・川口 +5.3%

京浜東北線でいえば、川口と赤羽は隣どうしで、荒川を渡るだけになる。それで上昇率が+5.3%と+13.8%に分かれている。

単価の絶対値でも面白いことが起きていた。赤羽駅前の最高地点が470万円/㎡で、大宮駅前の最高地点が465万円/㎡になる。大宮は新幹線が停まる北関東最大級のターミナルで、赤羽は乗り換え駅になる。それでも駅前の一等地の単価は、赤羽のほうがわずかに上になっていた。前年比も赤羽が+18.1%、大宮が+11.2%で、差は開く方向に動いている。

蕨はどう見えるか

以前蕨は「買い」なのかという記事を書いた。今回のデータで見ると、蕨は8駅の中でいちばん静かだった。

駅前の商業地が43.5万円/㎡、住宅地が32.5万円/㎡と26万円/㎡になる。上昇率は+5.2%から+6.1%で、東京北部の半分以下になる。池袋の最高地点1,700万円/㎡と比べると39倍の開きがある。

これを弱さと読むか、割安と読むかは立場による。都心まで30分弱の場所で、まだこの水準にとどまっているとも言える。ただし上昇率が低いということは、資産としての値上がりを期待しにくいということでもある。住むために買うのか、資産として買うのかで、評価がひっくり返る種類の数字になる。

ツールにした理由

数字を並べるだけなら表で足りる。それでもツールにしたのは、位置関係が絵になっていないと、距離が効いていないという事実が腑に落ちないからだ。

駅を中心に置いて、100メートルごとの輪を引いて、そのうえに単価の大きさで円を描いた。同じ輪の上に大きい円と小さい円が並んでいるのが見えたとき、はじめて距離では決まらないと分かる。

選んだ地点については、容積率、前面道路の幅、駅への近さの3つを棒グラフに分解して出るようにした。どれがこの値段を作っているのかが、その場で読めるようにしてある。

いまは8駅だけになる。データの取り方は決まっているので、駅を増やす作業は同じことの繰り返しになる。反応を見ながら、東京23区まで広げるつもりでいる。

注意しておくこと

このデータは地価公示と地価調査で、実際の売買価格ではない。国が選んだ標準地について、不動産鑑定士が評価した価格になる。実際の取引はこれより高いことも安いこともある。

それから、半径425メートル以内という制約はAPIの仕様で、これより広くは一度に取れない。地点数が少ない駅は、その範囲に調査地点が少ないという意味であって、その街に土地が少ないわけではない。

まとめ

・駅からの距離が10m違うだけで単価が5.6倍違う地点があった。効いていたのは容積率と前面道路の幅
・距離で説明できるかどうかは街の大きさで変わる。地点が多い駅ほど距離では説明がつかなくなる
・前年比の平均は埼玉4駅+6.8%、東京4駅+14.4%。荒川を渡るだけで上がり方が変わる
・赤羽駅前の最高地点は470万円/㎡で、大宮駅前の465万円/㎡をわずかに上回った
・蕨は8駅でいちばん静か。住むために買うか資産として買うかで評価が反転する
8駅の地価を分解するツールから。出典は国土交通省の不動産情報ライブラリ