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池袋は「買い」なのか?1,700万円/㎡の街で伸びが1.38倍にとどまる理由(2026年9月)

池袋は豊島区の巨大ターミナルで、JR・東京メトロ3線・西武・東武が集まる。この特集で扱ってきた9駅の中で、地価の水準は突出して高い。

ただし「高い」と「上がる」は別の話だった。

まず数字でざっくり掴む

指標補足
公示地価 最高地点 20251,700万円/㎡東池袋1丁目1番16外(駅130m)
前年比 2025+10.4%北千住+23.2%、赤羽+18.1%
8年間の伸び 2018→20251.38倍9駅で下から3番目
425m以内の住宅地の地点0か所すべて商業地
用途地域全地点が商業地域容積率600〜900%
所在東京都豊島区東京駅まで約16分

1,700万円/㎡は、蕨の43.5万円/㎡の39倍になる。それでいて8年の伸びでは蕨とほとんど変わらない。

高い街ほど、上がり方は鈍い

駅から425メートル以内の公示地点を並べる。

池袋駅周辺の公示地価 2018→2025(円/㎡) 0万 500万 1,000万 1,500万 2,000万 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 円/㎡ 東池袋1-1 900% 南池袋1-1 900% 西池袋1-17 900% 西池袋1-10 800% 南池袋2-97 800%

5本とも形がほぼ同じで、傾きの差が小さい。8年の伸びは1.38倍から1.57倍の間に収まっている。

北千住が2.15倍、赤羽が1.79倍だったことを思い出すと、池袋の地価は「もう高いところまで来ている」状態だと分かる。値上がり益を取りにいく対象としては、周辺駅のほうが速い。

8年でどれだけ上がったか(各駅の最高公示地点 2018→2025) 北千住 2.15倍 赤羽 1.79倍 王子 1.64倍 浦和 1.57倍 池袋 1.38倍 川口 1.31倍 南浦和 1.21倍 横軸は1.0倍を基点

9駅の中で池袋の位置がはっきりする。水準では圧倒的でも、伸びでは下から3番目になる。

コロナで2年続けてマイナスに落ちた唯一の駅

最高地点の前年比を年ごとに見る。

最高地点(東池袋1丁目1番16外)の前年比 +0% +5% +10% +9.8 2019 +7.4 2020 -2.8 2021 -2.1 2022 +3.6 2023 +7.7 2024 +10.4 2025

2021年-2.8%、2022年-2.1%と、2年続けてマイナスになっている。この特集で扱った9駅のうち、2年連続で下げたのは池袋だけになる。

赤羽は1年(-3.2%)、南浦和も1年(-1.3%)、北千住はゼロだった。人が集まることで価値が決まる繁華街ほど、人が来なくなったときの下げが長引く。池袋の数字はそれを示している。

そこから+3.6%、+7.7%、+10.4%と戻してはいるが、8年通してならすと1.38倍にとどまった。

住宅地の調査地点が1つもない

地点別に並べると、この街の性格が出る。

2025年 地点別の㎡単価(池袋駅から425m以内・公示地点) 東池袋1-1(駅130m) 1,700.0 容積900% 南池袋1-1(駅120m) 910.0 容積900% 西池袋1-17(駅130m) 826.0 容積900% 西池袋1-10(駅0m) 590.0 容積800% 南池袋2-97(駅280m) 488.0 容積800% 西池袋1-37(駅180m) 326.0 容積800% 西池袋1-24(駅100m) 221.0 容積800% 南池袋2-13(駅510m) 116.0 容積600% 万円/㎡

8地点すべてが商業地になる。駅から425メートル以内に、住宅地として選ばれた標準地が1つもない。

赤羽には2つ、南浦和には1つ、北千住には1つあった。池袋は駅の周囲が商業地域で埋まっていて、住むための土地という区分が成立していない。

容積率も600%から900%で、9駅で最も高い。床をたくさん積める代わりに、そこは住む場所として想定されていない。池袋駅の徒歩圏に家を買うという選択肢は、データの上では存在しないことになる。

地点駅から容積率2025年8年の伸び
東池袋1丁目1番16外130m900%1,700.0万円/㎡1.38倍
南池袋1丁目1番11外120m900%910.0万円/㎡1.45倍
西池袋1丁目17番3外130m900%826.0万円/㎡1.43倍
西池袋1丁目10番30m800%590.0万円/㎡1.53倍
南池袋2丁目97番13280m800%488.0万円/㎡1.57倍
西池袋1丁目37番2180m800%326.0万円/㎡1.39倍
西池袋1丁目24番6100m800%221.0万円/㎡1.44倍
南池袋2丁目13番4510m600%116.0万円/㎡1.43倍

同じ容積率900%でも1,700万円と826万円で2倍の差がある。駅からの距離はどちらも130メートルで同じになる。前面道路が50メートルと30メートルという違いはあるが、それだけでは説明しきれない。繁華街の中の一等地は、数値化しにくい集客力の差で値段が決まっている。

この街のリスク

ひとつ目は、下げるときに長引くことになる。2年連続マイナスの実績が8年の中にある。

ふたつ目は、単価の高さそのものになる。1,700万円/㎡の土地を買える主体は限られる。個人が投資対象として検討できる水準ではない。

みっつ目は、住む選択肢がないことになる。駅徒歩圏に住宅地の標準地がないという事実は、住居費が商業地の地価に引きずられることを意味する。

総合所見:使う街であって、買う街ではない

池袋の地価は、この特集で群を抜いて高い。ただし伸びは9駅で下から3番目で、コロナの下げは最も長引いた。

水準が高いということは、すでに評価が織り込まれているということになる。これから上がる余地を探すなら、北千住や赤羽のような周辺駅のほうが数字は良い。

個人にとっての池袋は、投資対象ではなく、通勤先や買い物先として使う街になる。住むための土地を探すなら、一駅ずらしたほうが選択肢が生まれる。

データについて

出典は国土交通省「不動産情報ライブラリ」の地価公示・地価調査のポイントになる。池袋駅の中心から半径425メートル以内の地点を使い、折れ線と横棒は基準日の揃う公示(1月1日基準)だけで作っている。地価調査(7月1日基準)は基準日が違うので混ぜていない。

公示地価は実際の売買価格ではなく、国が選んだ標準地について不動産鑑定士が評価した価格になる。実際の取引はこれより高いことも安いこともある。

地価データで街を読む特集はこちらにまとめています。9駅をまとめて比べたい場合は土地の値段はなぜ違うから。