オープンソースがついに「Opus 4.8 の背中」を捉えた──GLM-5.2 が変えるAI勢力図

Claude Fable 5 と Claude Mythos 5 がサービス停止したのが 6月13日のこと。 その日に「次のモデルの情報が少し漏れた」と聞いて、「またどうせ大げさな予告だろ」と思っていた。

ところが正式発表の内容を読んで、少し考えが変わった。

GLM-5.2。中国発、MIT ライセンス、オープンソース。 そして「Claude Opus 4.8 と実質 1% 差」というベンチマーク結果。


何が変わったのか

GLM-5.2 の前身、GLM-5.1 の最大コンテキスト長は 200K トークンだった。 それが今回、1M(100万)トークンに跳ね上がった。

「1M対応」を謳うモデルは最近増えてきたけど、Z AI が強調しているのは「対応してます」じゃなくて「実際のコーディング作業で安定して使える」という点。

長いコンテキストって、実は「詰め込めます」と「ちゃんと読めます」は全然別の話。エージェントが何時間もコードを書き続けるような状況では、後半になるにつれてモデルが前半の文脈を見失い始める。GLM-5.2 はそこに集中した、というのが今回の発表の核心だ。


ベンチマーク、正直に読む

3つの長期タスクベンチマークが出ている。

FrontierSWE(数時間〜数十時間規模のエンジニアリングプロジェクト完遂) Opus 4.8 に 1% 負け / GPT-5.5 に 1% 勝ち / Opus 4.7 に 11% 勝ち

PostTrainBench(H100 で小モデルをどれだけ改善できるか) Opus 4.7 と GPT-5.5 を上回り、2位(1位は Opus 4.8)

SWE-Marathon(コンパイラ開発・カーネル最適化など超長期タスク) Opus 4.8 に 13% 負け、Opus シリーズ以外では最高位

オープンソースという括りだと、3つ全てで最強という結果。

通常コーディング(Terminal-Bench 2.1)でも 81.0 点。Opus 4.8 が 85.0 点だから差は 4 点。GLM-5.1 が 63.5 点だったことを考えると、1世代での伸びが異常に大きい。


「Effort レベル」という概念

今回初めて導入されたのが、推論の力の入れ具合を調整できる機能

「サクッと答えてほしい」場合と「時間かけていいからベストを出してほしい」場合を明示的に選べる。Anthropic の Extended Thinking と似た発想だけど、これがオープンモデルに来た、というのが重要。

Max モードにすると計算を増やしてさらに性能が上がる。同じトークン消費量なら GLM-5.2 は GLM-5.1 より大幅に上で、Opus 4.7〜4.8 の間に位置する。


技術おもしろポイント:IndexShare

1M コンテキストを処理する最大の課題は「計算量」と「メモリ」。 GLM-5.2 はスパースアテンション層で 4層ごとに同じインデクサーを使い回す IndexShare を導入。1M トークン処理時の計算量を 2.9倍削減

さらに投機的デコーディング(MTP)の改善で出力の受理長が 20% 向上。同じ GPU でより長いコンテキストをより速く処理できるようになった。


「中国製 AI」をどう見るか

正直に書くと、GLM シリーズはずっと「名前は知ってるけど使ったことない」系のモデルだった。DeepSeek の衝撃後も、「コーディングなら Claude、チャットなら GPT」という感覚が抜けなかった。

でも今回の発表で、その感覚の更新が必要だと思った。

MIT ライセンス。地域制限なし。ローカルで動かせる。フロンティアに 1〜4% 差まで迫っている。

「オープンソースだから妥協」という時代は、少なくともコーディング用途では終わりかけている。


まとめ

GLM-5.2 のリリースで、AI コーディング能力レースは「クローズドが常に上」という図式が崩れつつある段階に入った。Opus 4.8 という頂点はまだある。でもそこに 1% 差まで迫るオープンモデルが出てきた。

Claude Fable 5 と Mythos 5 のサービスが止まったタイミングで、こういうモデルが出てくる。競争は、思ってたより速く動いている。


追記: モデルの重みは HuggingFace(https://huggingface.co/zai-org/GLM-5.2)から直接ダウンロード可能。自分はまだ触れていないけど、試した人いたら感想教えてほしい。


参照:https://z.ai/blog/glm-5.2 / https://gigazine.net/news/20260617-z-ai-glm-5-2-release/